
トンカットアリの効果の分析結果
トンカットアリは東南アジアで古くから利用されてきた植物で、現在では男性のテストステロンや性機能、勃起機能などについて人を対象とした研究も行われています。
一方で、飲めばすぐに性的興奮が起こるような即効性のある媚薬として考えるのは適切ではありません。
この記事では、トンカットアリとはどのような植物なのか、男性・女性それぞれに期待されている効果、性欲やテストステロンとの関係、安全性まで研究報告をもとに解説します。
トンカットアリとは?
トンカットアリとは、マレーシアやインドネシアなど東南アジアに自生する植物です。 学名はEurycoma longifolia(ユーリコマ・ロンギフォリア)で、「Long Jack(ロングジャック)」や「Malaysian Ginseng(マレーシア人参)」と呼ばれることもあります。
伝統的には根が利用されており、現在販売されているサプリメントでも主に根の抽出物が使われています。
トンカットアリには、ユーリコマノン(eurycomanone)をはじめとするクアシノイド類、アルカロイド、トリテルペンなど多数の植物成分が含まれています。 NIHのLiverToxでは、トンカットアリ抽出物から多数の化学成分が確認されていると紹介されています。
トンカットアリには、クアシノイド、アルカロイド、フェノール系化合物など多数の成分が含まれています。
Chemical analyses have demonstrated more than 65 compounds in extracts from Eurycoma longifolia including glycosaponins, quassinoids (eurycomanone, eurycomanols, eurycomalactones), canthine-6-one alkaloids, phenolic derivatives, coumarin, tannins, and triterpenes.

トンカットアリに期待される効果
トンカットアリについて研究されている代表的な作用として、次のようなものがあります。
- テストステロンのサポート
- 性欲や性的コンディション
- 勃起機能
- 精子や男性の生殖機能
- 活力やストレス
- 女性の更年期前後のQOLやホルモン関連指標
なかでも比較的研究が多いのが、男性のテストステロンとの関係です。
テストステロンをサポートする可能性
2022年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、トンカットアリを摂取した男性について、血中の総テストステロンが上昇する傾向が確認されています。 この研究では複数の臨床試験が分析され、特にテストステロン値が低い男性でも改善傾向が確認されました。
トンカットアリを摂取した男性について、血中の総テストステロンが上昇する傾向が確認されています。
A significant improvement in total testosterone levels after E. longifolia treatment was mostly reported in both healthy volunteers and hypogonadal men.
ただし、誰が飲んでも必ずテストステロンが増えるという意味ではありません。 現時点では、男性のテストステロン環境をサポートする可能性が研究されている植物成分と考えるのが適切です。
トンカットアリは性欲やムラムラに効果がある?
トンカットアリは古くから精力や性機能を目的に利用されてきました。 そのため「媚薬」として紹介されることもありますが、性的興奮を直接引き起こす催淫剤とは異なります。
男性を対象とした臨床研究では、性生活のクオリティや一部の性機能指標に改善がみられたという報告があります。 2012年のランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、30〜55歳の男性109人を対象に、トンカットアリ抽出物を12週間摂取した場合の変化が調査されました。 その結果、トンカットアリ摂取群では一部の性的機能やさまざまな指標で改善が報告されています。
30〜55歳の男性109人を対象に12週間摂取した試験では、一部の性的機能やQOL関連指標で改善が報告されています。
The EL group showed higher scores in the overall Erectile Function domain in IIEF (P < 0.001), sexual libido (14% by week 12), SFA- with sperm motility at 44.4%, and semen volume at 18.2% at the end of treatment.
即効性のある媚薬ではない
ここで重要なのが、「飲んですぐムラムラする成分ではない」という点です。 トンカットアリは、
- 飲んで30分後に性欲が急上昇する
- 飲めば必ず勃起する
- 相手を性的に興奮させる
といった作用が確認されている成分ではありません。 研究で確認されているのは、数週間単位で摂取した場合のホルモンや性機能の変化が中心です。
そのため、媚薬として分類する場合でも、すぐに効くタイプの媚薬というより、男性の性機能や活力を内側からサポートするタイプの成分と考えた方が実態に近いでしょう。
女性にもトンカットアリの効果はある?
トンカットアリというと男性向けの精力成分という印象がありますが、近年では女性を対象とした研究も行われています。
ただし、男性に比べると女性を対象とした臨床研究はまだ少なく、「女性が飲めば性欲が強くなる」と断定できるほどのエビデンスはありません。
更年期前後の女性を対象にした研究もある
2025年には、更年期症状のある40〜55歳の女性138人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験が報告されています。 この研究では、トンカットアリの標準化水抽出物を12週間摂取し、更年期に関連するQOL、気分、ホルモン、安全性などが評価されました。 100mgを摂取したグループでは、更年期関連QOLなど一部の指標で改善が報告されています。
更年期症状のある40〜55歳の女性138人を対象とした試験では、100mg摂取群で更年期関連QOLなど一部の指標に改善が報告されています。
Physta® 100 mg significantly reduced total MENQOL scores by 33.9% from baseline to week 12 (P = 0.049) with notable improvements in the physical (-36.4%, P = 0.046) and sexual (-36.3%, P = 0.043) domains.
女性の性欲にも関係する?
女性の体内にもテストステロンは存在しており、性的欲求を含むさまざまな身体機能に関係しています。 そのため、テストステロンとの関係が研究されているトンカットアリについて、女性の性欲との関連が期待されることがあります。
ただし現在のところ、女性が経口摂取したとしてもテストステロンが増えるなど十分な臨床試験で証明されているわけではありません。
女性については現時点では、
- 更年期前後のQOL
- ホルモン関連指標
- 気分
- 活力
- ストレス
- 身体的コンディション
などへの影響が研究されている段階です。
したがって、女性にも何らかの作用が期待されている一方、女性向け媚薬としての性欲増強効果はまだ十分に証明されていないという表現が適切です。
トンカットアリは勃起力にも効果がある?
トンカットアリはED(勃起不全)との関連でも研究されています。 2015年に発表されたメタ解析では、トンカットアリと勃起機能の関係について複数の比較試験が実施されました。 一定の改善傾向は確認されたものの、研究数や対象者数が少なく、EDに対する有効性を断定できるほどのエビデンスではないとされています。
一定の改善傾向は確認されたものの、研究数や対象者数が少なく、EDに対する有効性を断定できるほどのエビデンスではないとされています。
Based on current evidence, the herbal extract of Tongkat Ali may have clinical effect on erectile function. However, more efficacy trials are warranted to further support current evidence.
バイアグラの代わりになるわけではない
トンカットアリは、シルデナフィルなどのED治療薬とは作用が異なります。 ED治療薬は血流に直接作用して勃起をサポートしますが、トンカットアリは主にホルモンや身体コンディションとの関係から研究されています。
そのため、天然のバイアグラという表現は科学的には正確ではありません。
精子や男性の生殖機能にも関係する?
トンカットアリは男性不妊や精子の状態についても研究されています。 男性不妊患者を対象とした研究では、トンカットアリ抽出物の摂取後に、精液の一部指標が改善したという報告があります。
男性不妊患者を対象とした研究では、トンカットアリ抽出物の摂取後に、精液の一部指標が改善したという報告があります。
The proprietary extract of Eurycoma longifolia Jack significantly improved the sperm quality in these patients, allowing for 11 (14.7%) spontaneous pregnancies.
また、男性の生殖機能と植物成分について検討したレビューでも、トンカットアリはテストステロンや精液パラメータとの関連が研究されている植物のひとつとして紹介されています。
ただし、精子についての研究には動物実験も多いため、人間に対する効果が十分に確立されているわけではありません。
トンカットアリに含まれる主な成分
トンカットアリには多数の植物化学成分が含まれています。 代表的なものとして、
- ユーリコマノン
- ユーリコマノール
- ユーリコマラクトン
- クアシノイド類
- アルカロイド
- トリテルペン
- フェノール系化合物
などがあります。
ユーリコマノンとは?
ユーリコマノン(Eurycomanone)は、トンカットアリに含まれるクアシノイド類の代表的な成分です。トンカットアリにはアルカロイドやトリテルペンなど多くの植物成分が含まれていますが、ユーリコマノンはその中でも特に研究が多く、トンカットアリ抽出物の品質を評価する指標として使われることもあります。
ユーリコマノンが注目される理由のひとつが、テストステロン分泌との関係です。2013年の研究では、ラット由来の精巣組織やライディッヒ細胞を用いた実験で、ユーリコマノンがテストステロン産生を高める可能性が示されました。ライディッヒ細胞は精巣内でテストステロンを作る中心的な細胞です。
この研究では、その作用機序として、テストステロンをエストロゲンへ変換する酵素であるアロマターゼの働きを抑える可能性や、細胞内の情報伝達に関わるホスホジエステラーゼ(PDE)に作用する可能性が報告されています。また、精子形成との関連も研究されています。
ユーリコマノンは、ステロイド産生に関わるアロマターゼやホスホジエステラーゼの働きに影響し、テストステロン産生や精子形成に関与する可能性が示されています。
Eurycomanone enhanced testosterone steroidogenesis at the Leydig cells by inhibiting aromatase conversion of testosterone to oestrogen, and at a high concentration may also involve phosphodiesterase inhibition.
トンカットアリという植物全体としては男性ホルモンを高める研究データもありますが、それは複合的な成分によるものであり、ユーリコマノン単体だけの効果とは言い切れません。過度な期待や誤解をしないよう注意が必要な成分です。
一言でまとめると、「ユーリコマノンはトンカットアリの重要な注目成分で、動物実験では男性ホルモンを増やす可能性が示されたものの、人間で性欲増強や勃起改善の効果があると決まったわけではない」ということです。
トンカットアリに副作用や危険性はある?
トンカットアリは植物由来ですが、天然成分だから完全に安全というわけではありません。 日本では安全だとして販売許可のある成分ではありますが、世界ではどうなのでしょうか。
欧州での臨床結果では、トンカットアリの長期使用について十分な安全性データがないことが指摘されています。
EFSAは特定の抽出物について安全性を確認できないと評価
欧州食品安全機関(EFSA)は2021年、評価対象となった特定のトンカットアリ水抽出物について、 遺伝毒性への懸念から安全性を確立できないと結論づけています。 欧州の基準ではあくまでリスクがあるという位置付けであるようです。
これは、すべてのトンカットアリ製品が危険という意味ではありません。 あくまで、欧州の専門機関が評価した特定の抽出物と使用条件に対する評価であるので参考程度にしておきましょう。
評価対象となった特定のトンカットアリ水抽出物について、遺伝毒性への懸念から安全性を確立できないと結論づけられています。
The Panel concludes that the NF has the potential to induce DNA damage, which is of concern, particularly locally for tissues that represent first sites of contact. The Panel concludes that the safety of NF has not been established under any condition of use.
トンカットアリ配合の媚薬・サプリを選ぶときのポイント
トンカットアリ配合の商品を選ぶ場合は、単純に「配合されているか」だけを見るのではなく、品質も確認した方がよいでしょう。 確認したいポイントとしては、
- トンカットアリの配合量
- 原料の産地
- 抽出方法
- 規格化成分の表示
- 製造会社
- 第三者機関による品質検査
などがあります。
特に海外製の女性用媚薬・精力サプリでは、表示されていない医薬品成分が混入しているケースもあるため、販売元が不明確な商品には注意が必要です。
トンカットアリ配合の女性用媚薬を比較する
トンカットアリの効果のまとめ
トンカットアリは、東南アジアで古くから男性の活力や性機能を目的に利用されてきた植物です。 現在では主に、次のような関係が研究されています。
-
テストステロンの分泌促進(男性)
-
性欲や性的コンディション
-
勃起機能
-
精子や男性の生殖機能
-
女性の更年期前後のエストロゲン値をサポート
-
活力やストレスを軽減
特に男性のテストステロンについては、複数の臨床試験を調査すると数値が上昇する可能性が示されています。
一方で、飲んだ直後に性的興奮を引き起こす即効性の媚薬ではありません。 また、ED治療薬の代わりになる成分でもありません。
女性についても研究は進んでいますが、現時点では「女性の性欲を高める媚薬」と断定できるほどの研究結果はありません。
そのためトンカットアリは、直接ムラムラさせる媚薬というより、ホルモンや性機能、活力といった身体のコンディションをサポートする可能性が研究されている植物成分と考えるのが適切でしょう。